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前回ついに嫁が出来た話を書いて、知人から様々お祝いの言葉を頂いた。

当人としては何か特別な変化が起こった感覚はあまり無いのだけれど、やっぱり結婚というのは周りからすると

相当大きな変化なのだろう。

 

所帯を持つ、ということだけでそれまでの知人から「しっかりしてきたな」などと言われるようになる。

世の中には所帯を持ちながらパチンコ、競馬、酒タバコに溺れ自分自身のみならず連れ合い、そして子供までも自堕落の海に

沈み込んでいく輩もいるのだ。所帯を持つイコール「しっかりしてくる」とはならないはずなのだが。そしてそんなレッテルだけで

人を判断しないでくれと少し文句もいいたくなる。といいながらそういう風に先輩がたから面と向かって言われると、なんだか自分も

幾分まともな人間になったような気がしてくるのだ。人間とは、そして言葉の持つイメージ喚起力と影響力というのはまったく馬鹿にならないと

つくづく思う。

 

さて、幸か不幸か私の人生の道連れとなった女性はどんな女性なのだろう?

一緒にダンスの練習を始める上で、実は少し不安があったのだ。

 

この女性、およそ運動をするようなイメージが無い。

高校時代は陸上ホッケーをやっていて、かなり真っ黒に日焼けをしながらガリガリと運動をしていたという話なのだが昨今の言動を見ているとおよそ想像がつかないのだ。

陸上ホッケーという単語も始めて聞いたのだけれど、そのスポーツの存在と彼女が運動していた光景、というのはまるでムー大陸が世界の中心であった頃の世界や、

幻の生物、ツチノコやヒバゴンやレプティリアンの存在みたいに僕の中では眉唾物なのだ。

 

仕事の上とはいえ、ダンスを嫌々やらせてしまう形になったらこれはこれで大変だ。

やせてスタイルが良くなるはずなのに、なれないダンスのストレスで暴飲暴食、むしろ体重増加の要因になりはしないかと不安でならなかった。

ただでさえ過剰なまでに惣菜が並ぶ渡辺家の食卓の前に、満腹中枢が麻痺し始めている恐れがあるのだ。しかも困ったことに食に関しては

彼女はかなり律儀な質で「出された物は一通り食べなければ作ってくれた人に申し訳ない」という考え方の持ち主。消費税増税に伴い

エンゲル係数が恐ろしい事になるかもしれない。

 

渡辺家の、というか父親の食卓が埋め尽くされるほどの種類の惣菜が無いと気がすまない というスキルと

彼女の 出された物は有無を言わず食い尽くす、 というスキル。この二つと、なれないダンスのストレスが重なるとき、恐ろしい事になりはしないかと・・

 

が結果としては彼女はまあまあダンスを気に入ってくれたようなのだ。合唱を大学時代はずっとやっていたらしく、舞台に立つことには抵抗は無いだろうけれど、

人前で踊る、という行為にはおよそ縁のなかった女性なので、始めはダンスを始めなければならないことにかなりの抵抗を示していた。

 

ダンスを通して嫁いだ家の両親とコミュニケートを図れることも良かったらしい。

姿勢が良くなる。体幹が鍛えられるので、体つきが美しくなる。そうなると目線の位置がかわるので、脳に入力されてくる情報も今までとは

かわってくる。自然と考え方、人生に対するスタンスなどが前向きに、強靭な物になってくる。そういう感覚はこれまでの彼女の人生には

無かった物のようで、新鮮なのだろう。と勝手に分析してみた。

 

ともあれ、彼女が本格的にダンスにのめりこんでくれることで、

白く、太く、腰がつよい、まるでうどんのような女性になる運命から逃れるすべを得てくれればと切に願う。

 

そして何よりもこの文章が彼女の目に留まらないことを切に願うばかりである。

最後に彼女の名誉の為にも書いておくのだけれど、別にまだ彼女は普通体型である。

この先どうなるかは彼女の努力と渡辺家のエンゲル係数の推移しだいである。