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十五話
二度目のカップルと夜逃げ
前回先生の意に沿わない形でカップルを解消した為、その教習所を
辞めることになった話を書いた。その後暫くすると毎日まっすぐ家に
帰るのは、やはり詰まらなくなってしまい今度は近所の教習所に入会した

二、三回個人レッスンを受けた後で、そこの教習所の所属する団体の主催の
競技会があるので、カップル練習をしませんかと言われてその競技大会の為に
パートナーを紹介され、カップル練習のクラスのレッスンを受けることになった。

後でこのクラスで練習していたM君と私と紹介されたパートナーの女性がプロに
転向しているので、それなりの熱の籠った練習をしているクラスだった
その競技大会の為の即席のカップルだったのだが、少し成績が良かったので、
正規の競技会に向けて “本格的にカップルとして組んで練習を” といわれた。

又、断ると前回の教習所で辞めなければ為ら無い事になってしまったことを
考えると、断り切れず個人レッスンのクラスからカップルレッスンのクラスに
代わる事になった。

パートナーとして紹介された女性は、看護婦さんを仕事にしている人で仕事柄
優しい親切なよく気を遣う女性だった。ダンス歴も長く直に踊りを合わせられる
だけの実力の持ち主だったので練習はうまくいっていた。

だが少し問題が出てきた。彼女は優しく気を使う分独占欲が少し強かった。
彼女は教習所へ通うのにローカル線の電車を利用していた。その電車は
一時間に一本位しか運転されてなく、練習が終わると車で駅まで送り届ける
のだが、次の電車を待つ間一人で駅にいるのは嫌なので、次の電車が
来るまで一緒にいて欲しいと頼まれてしまった

前にも書いたが、私は女性と二人だけなんてすごく苦手である。それが駅の
駐車場で車の中で次の電車の来るまでの時間、狭い車の中で二人きりで
過ごすことになってしまった

電車を待つあいだの車の中で、話が途切れた途端、沈黙の密室の空間に
耐えられずに頭の中は次の、言葉を探して焦りまくらなければならなかった
私には密室状態の中で女性に気の利いた言葉をつかえるセンスなどない
さらに彼女は親切すぎるほど親切なのでドギマギが収まる時がない

私は耐えられそうにない密室の空間を脱出できる名案を思いついた
一緒に練習しているM君、I君カップルは反対方向の自動車教習所から
上福岡方面なので彼女を駅に下して反対方向の彼らを、順番に送り届ける
ことにしたと彼女に告げた。

私は名案で問題は解決したと思った。だが結果はさらに悪化した
彼女は “私も彼らを一緒に送っていく” と言って駅で降りずにそのまま
同行することになった。結果駅で待つ時間に反対方向から帰ってくる時間が
追加されてしまったので、更に密室の二人だけの時間が延長されたことに
なってしまった

彼女は凄く気を遣う優しい人なで、何かと気を使ってくれているのがよくわかる
それを考えると前の教習所の二の舞は避けたいので、問題の起きる前に
思い切って決心した。

結論は夜逃げである。何時もの様に練習をして、練習の終了した後に
さり気無く自分の全ての用具を仕舞もって、教習所を出るとき内心で
“二度目のパートナー”と教習所に別れを告げた

その後、M君カップルも、彼女も、私も、別々の教習所だけどプロに転向した
それぞれに教師になって頑張っていた。 二度目のカップルの話は終わった